令和4年度作業療法士のための認知症対応力向上研修会は、その名の通り様々な領域における事例を通して認知症の人に対する具体的な支援について学び、作業療法士としての対応力を向上しようという趣旨で開催いたしました。前田克彦先生・桜川淳也先生・岩切良太先生に事例を提供、紹介していただきました。様々な視点・領域から3事例のグループワークを行い、「より良い対応方法」の検討を行いました。
流れとしては、まず事例の基本情報を説明していただいた後にグループワークを行い、まとめた意見を発表しました。その後、事例提供してくださった講師の先生方から実際に取り組んだ内容やその後の状況について紹介・説明していただきました。
1事例目は、椎葉村社会福祉協議会の前田克彦先生より、地域で生活されている方の介護予防サービス計画に対して、基本情報などの資料から「地域ケア会議などで助言するとしたら」というテーマのもとグループワークを行いました。1年後もその方が地域で生活するにはどうすれば良いのか、について様々な意見がありました。また、椎葉村という地域特性の中での取り組みや新しい資源の開発についても一部ご紹介いただきました。
2事例目は、協和病院の桜川淳也先生より、初期集中支援チームで関わった認知症の事例について、支援課題を説明いただき「入浴拒否」をテーマにグループワークを行いました。入浴拒否の理由・背景には何があるかなどを中心に話し合いました。施設によっては分野が違うこともあり、具体的な支援策が聞けて勉強になったという意見もありました。また、この事例ではネグレクトについても言及され、初期集中支援チームで関わった後の引継ぎも重要であるということを学ぶことができました。
3事例目は、日南市立中部病院の岩切良太先生より、回復期病棟に入院されていた認知症の人に対する対応の事例を説明していただきました。~頻回の転倒~そわそわした生活~日常生活・リハをどう展開していくか、の3つのポイントについて、グループワークを行いました。「当事者本人がどうしたいのか、本人の意向をしっかりとくみ取り方針を考える」という視点にハッとさせられたという意見もありました。3つのポイントについて、すべてが繋がっており、病気の理解だけでなく人生観などを含む、その人全体を理解することが重要であるということを今回の事例を通して学ぶことができました。
どの事例でも、たくさんの意見交換がされていて、それをまとめるには時間がギリギリでした。それぞれの事例について15分と短い時間ではありましたが、普段は行えない他施設との意見交換の場にもなり、学ぶことが多かった研修会でした。
大悟病院 リハビリテーション室
押川真唯