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平成30年度.認知症OTステップアップ研修活動報告

 11月11日(日)に宮崎県立宮崎病院にて平成30年度認知症OTステップアップ研修を開催しました。今回は京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻作業療法学講座 助教の小川真寛先生をお招きして、「認知症の人の作業に焦点をあてた評価と介入」というタイトルでお話し頂きました。

 認知症の作業療法というと回想法やバリデーション、RO、レクや手工芸、音楽、園芸ななどを思い浮かべますが、こうした手段としての作業だけでなく、時代の流れは目的としての作業の直接的利用に変遷してきているという話から始まりました。

 認知症を持つ方に対して、作業に焦点を当てた実践を行う際、その作業をどう抽出してどう可能化していくのか、作業遂行のニーズを明確にして作業遂行・参加を導くためにMTDLPやOTIPM、CPPFなどのプロセスモデルが紹介されました。

 プロセスは思考・行動過程を助けるルートマップのようなもので、自分がどこで躓いているのか振り返ることもできます。ただ認知症を持つ方のニーズを把握することや作業遂行を促進するための支援はプロセス通りに進めることが困難な場合も多くあるため、観察からの評価や家族・他職種からの情報収集、環境調整などの試行錯誤を繰り返し作業に焦点を当てた実践を行っていく必要があること、また日本作業療法士協会版の認知症の人に対する作業療法ガイドラインも紹介されました。
 
 後半は小川先生が翻訳された著書、プール活動レベル(PAL)についてお話頂きました。PALは英国の作業療法士であるPool氏が作成した認知症を持つ方への作業を基盤とした介入ツールです。まず6項目44個の質問から構成されているPAL個人史プロフィールや、9つの観察項目から活動能力を4段階のレベルに分類するPALチェックリストというもので評価を行います。その後、PAL活動プロフィールというもので対象者が活動に結び付くことを援助する実践的な手法を導きます。ここではPALについて説明しきれませんが、研修の中ではPALを用いた事例を聞いたり、実際にPALチェックリストを付けてみたりすることで、PALの使いやすさや認知症の方の作業能力をチームで共有することのイメージを持つことが出来たと思います。PALは認知症のある方への作業の参加を導く補助的なツールであり、対象者の興味や能力に応じたテーラーメイドの作業を利用することに有用である、とまとめられていました。評価はPALだけではありませんが、私自身は今回PALを学び、感覚的で曖昧な表現になりがちだった作業能力の部分の情報が整理され、またチームでの情報共有の参考にしてみたいと思いました。

 今回のステップアップ研修は54名の方にご参加いただきました。講師の小川先生、運営に携わられた先生方、前日からの研修や懇親会にご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました。(小池晶子)

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