平成29年12月17日、宮崎リハビリテーション学院において、「認知症アップデート研修」が行われました。認知症の基礎知識を再確認すると共に最新の情報を共有することを目的に4つのテーマの講義がありました。
先ずは、小川敬之先生より「世界及び日本における認知症の課題」について御講話いただきました。世界的に財政面からも国家を揺るがす大きな問題として認知症対策への重要性を改めて感じることが出来ました。認知症の社会的位置付けの変遷についても考えされられました。また留学先のアメリカでファミリーサポートが充実していることを実感された話は印象的でした。
次に、辻美和先生より「認知症の障害の本質と認知症原因疾患への理解」について御講話いただきました。老年学から始まりDSM-5と社会的認知障害や認知症の理解に至るまで認知症を幅広く捉えた盛り沢山の内容でした。作業療法士としてまた医療従事者としてもアップデートしておかなければならない内容であり、基本の大切さを改めて感じました。
午後からは、櫻川淳也先生より「BPSDの原因・背景及び障害構造の理解」について御講話いただきました。まずはBPSDというものを正しく理解するために総論的なところから始まり各論の中でより具体的でわかり易い内容だったので自分の頭を整理することが出来ました。家族支援の大切さは言うまでもなく各先生方のキーワードとも言えます。BPSDに対する認識が変わったという皆様の声も多数聞かれました。私自身も本内容は明日からの臨床に活かせる様々な視点を学ぶことが出来ました。
最後に、道本純子先生より「認知症OTにおけるアセスメントとマネジメント」について御講話いただきました。認知症評価について改めて勉強できたと共にインターネットを有効に活用する具体的な方法まで教えて頂き参考になりました。また道本先生自身の経験談は当事者とその家族の立場からの現実的な心理面を感じさせられるエピソードであり非常に貴重なお話を拝聴することができ強く印象に残りました。
今回の研修を通して、認知症の現状、認知症の人、その家族、関わりうる全ての人々や社会背景などにおいて、特に基本的な内容の重要性、更にそこから拡大する柔軟的で包括的な視点の大切さを感じ、私自身改めて大きな学びを得ました。
日本作業療法士協会が主催する認知症OT推進委員会議を受け、協会と都道府県士会の認知症対応双方向の窓口ともなる「認知症OT推進委員」が各士会に設置されたことは皆様も良くご存知のことと思われます。これにより国、協会、各士会が相互に情報共有を行いながら認知症に関する知識や動向、現状を理解、把握することが求められ本研修の内容は刮目に値すると考えます。本研修も今回で二回目となり修了証の発行も延べ113名を数えました。皆様におかれましても本研修が日本の認知症作業療法の推進に向けた研鑽となるべく益々のご活躍の一助となることができれば幸いに思います。
協和病院 甲斐賢一