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平成29年度.第1回認知症アップデート研修の活動報告

 今回の研修会では、認知症について世界や日本での取り組みをはじめ、障害の本質やBPSDについての理解の深め方、作業療法におけるアセスメントとマネジメントという幅広い内容で、4人の講師の先生方に教えて頂きました。

 初めに小川敬之先生の「世界・日本の認知症への取り組み」についての講義では、世界においても日本においてもスティグマが大きな課題となっており、地域の住民や多くの人が認知症について知識と理解を深めることで優しい街づくりができ、一人一人が愛を持って接することが大切であるという話が印象に残りました。若年性アルツハイマーの方の「出来ることを奪って‘’出来ない人‘’としないで欲しい」という話を聞き、共感的理解の重要性を改めて知ることが出来ました。

 辻美和先生の「認知症の障害の本質と認知症原因疾患の理解」についての講義では、加齢に伴う心身の変化や、老化と認知症の違いについて詳しく学ぶことが出来ました。フレイルに関しては、健康と身体機能障害の間に位置した要支援・要介護の危険が高い状態であることや「栄養・体の動き・社会参加」が相互に作用し合っており、悪循環にもなれば良循環にもなるということを知りました。リハビリの介入によって良循環のサイクルを作り出すことが可能であることを考えると作業療法はいかに重要であるのか深く考えさせられました。また、リロケーションダメージの話では馴染みの無い場所をはじめ、対人においても混乱することがある為、信頼関係も重要であると知ることが出来ました。

 桜川淳也先生の「BPSDの原因・背景及び障害構造の理解」についての講義では、脳の構造や機能変化に伴う神経学的視点と精神的プロセスや心理視点の両面からの理解について、具体例を通して分かりやすく学ぶことが出来ました。BPSDの対応については、介入時の接し方(先行条件)によって結果が変わるという事を実際の事例を通して教えて頂き、スタッフ間での情報共有が大切であると改めて実感しました。また、本人や家族の抱える不安の背景を探り、安心の提供を行うことが大切であるということも学ぶことが出来ました。

 最後に道本純子先生の「認知症作業療法におけるアセスメントとマネジメント」についての講義では、エビデンスに基づいた作業療法を他職種に伝えることの重要性や文献検索の方法、認知症に関する評価方法について教えて頂きました。文献検索に関して、文献を読む機会が年々減っていると痛感したこともあり、認知症疾患治療ガイドラインの文献を読みました。 文献の文章の中で、‘’BPSDを問題行動と捉えるのではなく、「その人の心の表現」と解釈し、本人の意図するところ・訴えたいことを把握し、本人の立場で対応すると結果的にBPSDの軽減につながる‘’という文章が特に印象に残りました。

 私は認知症疾患医療センターである大悟病院で勤務しており、認知症の人に関わる場面が多いですが、今回の研修会を通して改めて認知症に関する知識から対応について考えを深めることが出来ました。一人の人として愛を持って接することや共感的理解を忘れずに、今後も心に寄り添うことが出来る作業療法士でありたいと思いました。

大悟病院 上西 渚

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