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令和5年度「作業療法士のための認知症対応力研修会」のご報告

令和6年2月3日、「作業療法士のための認知症対応力研修会」を開催しました。初のハイブリッド方式での試みであったため、研修開催にあたり、様々な不手際やご迷惑をお掛けしましたことを先ずはお詫び申し上げます。

今回も昨年度に続き、地域部とのコラボ企画で、様々な領域における事例を通して認知症の人に対する具体的な支援について学び、作業療法士としての対応力を向上しようという趣旨で行いました。

現地参加の会場は宮崎保健福祉専門学校にご協力いただき、オンライン参加者と混合でグループワークを行いました。研修の流れは、事例提供者が対象者の基本情報・アセスメントの結果と解釈を提示し、それに基づいて何を目標にどんな介入ができるかグループの中でアイデアを出し合い、まとめた意見を発表しました。その後、事例提供者が行った具体的な介入内容や経過などをお話いただき、最後に支援のポイントを整理してまとめていただきました。

 1事例目は、いしかわ内科の道本純子先生に、通所リハビリテーションで関わった認知症の事例を紹介していただき、服薬管理や金銭管理、外出時屋外歩行の転倒リスク、病識がなく協力が得られ難いなどの対応課題についてグループワークを行いました。社交的で社会性が保たれていること、趣味の囲碁や知人との交流を楽しめていることなど、趣味仲間や知人、家族などの協力も得ながらサービスも併用して少しでも本人の今の生活が担保できるよう支援するなど、様々な意見がありました。実際の支援のポイントとして、本人主体の支援、本人が納得して受ける支援が効果的であったこと、関係事業者や家族など支援者同士の連携が有効であったことなど紹介いただきました。

2事例目は、協和病院の桜川淳也先生に認知症治療病棟で関わった事例を紹介して頂きました。社会的交流や趣味活動に参加できていないこと、更衣や入浴ができないことなどの対応課題についてグループワークを行いました。先ずは対象者との関係づくり集団より個別での介入から徐々に交流場面を広げていく、対応やケアをスタッフ間で情報共有することで本人のストレス緩和を図る、役割や趣味活動、他者との関係づくりを工夫することで不安や不満の軽減を図るなど、様々な意見がありました。実際の介入ポイントとして、認知症の人のBPSDは満たされていない欲求、ニーズの表現として捉えることができること、情報収集・面談・観察の多方面から複合的に評価し、対象者のニーズを、その人の人生や生活の文脈の中で確認し、その人にとって意味のある作業に焦点をあてていくことが求められること、BPSDに潜在化したニーズを捉えていくためには、本人によって語られる作業の文脈を通して主観的体験を理解し、BPSDと作業参加との関連性を結び付けていくことが重要であることなどを学ぶことができました。

3事例目は、日南市立中部病院の岩切良太先生より提供して頂きました。初期集中支援チームで関わった事例に対して、BPSDをどのように捉えるか、嫉妬妄想はなぜ起こっているのか、この方の終着点やご家族の支援をどうするかなどの課題についてグループワークを行いました。BPSDや嫉妬妄想は自己肯定感や様々な不安感が原因のひとつと捉え、できるADLをうまく引き出しながらADLのギャップを埋めていく、食べこぼしなどの失敗を減らす工夫、遂行機能を評価し環境調整、本人ができる役割を持ってもらう、疼痛への不安を緩和できないか、医学的、心理的、リハビリテーション含めたアプローチを行う、本人やご家族の意思や意向と介護者の負担などを考慮しながら今後のことを検討する、ご家族の支援としてレスパイトケアや認知症の理解を深めてもらうなど、様々な意見がありました。実際の支援のポイントとして、支援終了後もケアマネジャーと継続した連携を取ることで、スムーズに再支援につなげることができたこと、専門職が訪問を頻回に行うことで、顔なじみの関係を作ることができ、信頼関係が構築できるからこそ、病院受診や短時間デイなどのサービスにつなげることができたことなど紹介いただきました。

グループワークでは、具体的な事例に対して活発な意見が出され、様々な視点やアイデアが聞かれました。また、他施設他分野との意見交換の場ともなり、楽しくざっくばらんな雰囲気の中で学びの多い研修会となりました。

ラポール向洋 甲斐賢一

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